最近、映画を2本観に行きました。
まずはヒュー・グラントの最新作『ラブソングができるまで』。
<公式サイト> http://wwws.warnerbros.co.jp/musicandlyrics/
これ面白かったなぁ~。ヒューを世界一男前だと思っている「ふぉとみっちゃん」のような♀に限らず、全てのハートウォーミングストーリー好き、そして音楽(特に80s)好きが、心から楽しめる作品となっております。出演作品選び(決め手はシナリオらしい。)に定評のあるヒュー・グラント、今回のチョイスも実に心憎い。
今回ヒューが演じるのは、80年代に『POP』というアイドル・バンドの一員として一世を風靡し、今は昔の栄光を糧に細々とイベント巡業して食いつなぐアレックスという男。“忘れられたスター”という役どころは、決まってアル中か何かで、悲壮感たっぷりに演じられるのが常だが、アレックスは飄々としていて、それなりに現状を楽しんで暮している風なのが面白い。
現実でも、「有名バンドの復活」や「元セレブのリアリティ番組出演」が大流行りの昨今では、“生き恥さらすは武士の名折れ”なんて感覚も希薄化しているようだし(ひと昔前のスターはそんな感覚持ってたハズ_西洋人といえども)、過去を売り物にすることでそれなりの人気と収入が得られるようになっている。私はイギリス滞在中、ちょうど『デュラン・デュラン』再結成の過程をリアルタイムで目撃した。初めのうちは「よせば良いのに―」「誰、このオッサン達」と冷ややかだった大衆の反応が、彼らの衰えぬパフォーマンス(まぁ容貌はともかく…)、歳月や逆境を乗り越えた「味わい」、そして、80s特有の「ミディアム・テンポでメロディアスかつビートの効いた」楽曲に触れるにつれ、80sを知らない世代を巻き込んで注目→リスペクト→熱狂へと変化していったサマは、なかなかドラマチックだった。映画に出てくる『POP』の曲調や“腰フリ”は『ワム!』っぽい感じがしたけど、どうも私は、アレックス=ヒューのイメージが『デュラン・デュラン』とダブってしかたがない。
80sといえば、その『デュラン・デュラン』をはじめ、『カジャ・グー・グー』『カルチャー・クラブ(ボーイ・ジョージはゴシップだけは現役ですなぁ)』『アンダム&ジ・アンツ』etc...といった“英国ビジュアル系”バンド花盛りの時代であり、また、ヒュー・グラント自身が『モーリス』という(ある種)“英国ビジュアル系”映画で妖しく美しくスクリーン・デビューを果たした時代でもある。つまり、80s“英国ビジュアル系”だった「元アイドルスター」をヒュー・グラントが演じるというのは、それ自体、ちょっと虚実ないまぜっぽい「遊び」が入っているように思う(もっともヒューは90年代に『フォー・ウェディング』で一足早く(そして昔以上に)ブレイクしてますけど)。そんな調子で、この映画には「80sネタ」や現代ミュージックシーンに対する皮肉をこめた「楽屋落ち」的ギャグが随所に散りばめられており、観る者を飽きさせません。
なんて、ゴチャゴチャ書いちゃったけど、80sを抜きにして、普通のラブコメとして観ても_普通に面白い(共演のドリュー・バリモアも好演)。
“男と女の関係は、歌における曲(music)と詞(lyrics)のようなもの。”という本作品のテーマがどのような形で現れてくるか、それを観てどう感じたか_ パートナーや友達や家族と、或いは1人で思いをめぐらすってのも、オツなもの。でも恋愛映画って、気の置けない友達と観て、帰りに美味しいものでも食べながら、あーだ×こーだ論じ合うのが1番盛り上がります♪
さて、もう1本は、昨日見てきたばかりの『クイーン』。
<公式サイト>http://queen-movie.jp/
本当は母を連れ出して、もう1回ヒューを観に行くモクロミだったんだが、「あたしゃそれより『クイーン』が観たい」という母の一声で、お供して観て参りました。正直、「ふぉとみっちゃん」はロイヤルファミリーつうものに殆んど興味ないんですが、この母親に薦められ本や映画を見たり、また、otochanがイギリスへ遊びに来るたんびにウィンザー城やバッキンガム宮殿の中を一緒に見学したりして、気がつけば色んなロイヤルファミリー・グッズ(図録や絵皿やキーホルダーなんか)が手元にあったりする。
これは、絶対イギリスしか作れない映画だ。そもそも日本には、実在しかも現役の皇族や首相を主役に、こうした人間臭いドラマを作る土壌も能力も度胸も無い。また、アメリカで仮にブッシュを主役にした映画を作ったら、完全な美化か徹底した揶揄か_ いずれにしても大げさで一面的な描き方しかできないような気がする。しかし、イギリスは違う。
表向きはポーカー・フェイスの威厳を保ちながらも、内面では家庭問題や大衆の反応に終始動揺しているエリザベス女王。若さと人気の絶頂にありながら(このころが懐かしいだろうな~)女王の前では卑屈なニヤニヤ笑いをしてしまうブレア首相。自分達の下世話な好奇心が悲劇を招いたことは棚に上げて王室ばかりを非難するマスコミと一般大衆。その大衆から「人民のプリンセス」と祭り上げられてはいるが、残された映像や写真から「顔だけ良い女」の素顔が見え隠れする故ダイアナ元妃…こうした、自分達の【凄くないところ】を自分達自身でユーモアを織り交ぜながら巧みに表現し、面白がってみせることで、自分達のことを【逆に凄いでしょ?】と表現してしまう芸当は、イギリスの得意中の得意。そして、それを観た者は、知らず知らず「なんかイギリスって凄いなぁ~」という気にさせられてしまう・・・ それこそが、イギリスの(良くも悪くも)凄いところだと思う。
そんなイギリスの凄さが、凄い演技と凄い演出で堪能できる『クイーン』は、異様に凄い映画といえるかもしれません。「ふぉとみっちゃん」なんか、観ていてソラ恐ろしさすら感じてしまいます。
余談ですが、エリザベス女王が日常的に愛飲している紅茶は、王室御用達の高級茶葉ではなく『PG tips』という、スーパーなどで大箱売りされている格安茶葉(但し味は良い)だという記事を読んだことがあります。映画の中で、お茶の時間に女王がティケーキにジャムを乗っけてかぶりつこうとした途端、ブレア首相から電話が入り、「お茶が冷めてしまう!」と夫のフィリップ殿下は憤慨し、食べ損ねた女王は一瞬ベソをかいたような表情になる_ というシーンがあるのですが、イギリスの典型的な老夫婦そのものの2人の態度と共に「女王は、こんな豪華なティセットで『PG tips』を飲んでるのかなぁ」と連想して、なおさら可笑しくなってしまいました。妙に印象に残るシーンです。
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